関税の影響に対処するコネクテッドデバイスサプライチェーン

カテゴリ
市場データ
日付
2025年5月16日

スマートフォンや PC の関税は今のところ回避されていますが、消費者や企業は不安を拭えません

文責:Jake Schindler

4 月 2 日、トランプ政権の関税が発表され、電子機器サプライチェーンに衝撃が走りました。これに伴い、中国との間では関税が段階的に引き上げられ、混乱を深める事態となっています。その後、両国による展開は一定の落ち着きを取り戻しています。4 月 12 日には、高額な電子機器製品においてステッカーショックが発生することに政権が警戒を示し、スマートフォン、PC、チップは免除されました。さらに最近では、米中協定の実現の兆しが見えてきました。

関税の可能性に対しては生産者も消費者も先んじて対応しようとするため、二転三転する関税の脅威は、短期的には、特定の市場で重大な混乱を招くおそれがあります。

中期的には、米国の貿易政策によってもたらされる経済の不確実性が大きな懸念事項となります。消費者はさらに慎重になり、企業は巨額の投資判断を下すことへの躊躇を強める可能性があります。

長期的には、主要なハイテク機器のサプライチェーンにおいて地域的な変化が生じる可能性があります。そうなると、ライセンス面に重大な影響が及び、デバイス価格、OEM の競争力、侵害のリスクなどにも影響することになります。

2025 年第 1 四半期の市場データと、2024 年通年の市場データ(一部の市場)を詳しく見ていきます。

Wi-Fi 7、エンタープライズセールスで 2 桁の普及率を達成

最新バージョンの Wi-Fi 規格を導入している企業は増加の一途を辿っています。IDC によると、エンタープライズ WLAN 市場は全体的に落ち込んだ年があったものの、その後の 2024 年第 4 四半期には成長に転じました。

最新の標準規格の背景には、アクセスポイント(AP)のシェア拡大が挙げられます。Wi-Fi 7 の場合、四半期の間に依存型 AP の収益が 4.9% から 10.2% に増加しました。

収益別で見ると、当該市場で最も収益をあげている企業は Cisco と HP Enterprise で、Huawei がこれに続きます。しかし、Wi-Fi 7 エンタープライズ製品のみで見てみると、この中国系企業が、市場シェアと出荷数において世界 1 位となります。

Enterprise WLAN Q42024

出典: IDC - Enterprise WLAN Q4 2024

関税の影響に先んじて PC が大幅に増加

第 1 四半期における PC 出荷数の伸び率は、5% から 10% の範囲内になると推定されています。Windows 10 のサポート終了と、関税の可能性に先手を打つ小売業者の取り組みが、引き続き市場を支えることになるでしょう。一方で、「解放記念日」後の予測困難な状況が深刻化したことにより、PC 販売で重要な役割を担う「企業調達」に支障が生じる可能性があります。

出荷数においては、Lenovo が実績リストの中でトップの地位をキープしています。Windows の主要ライバルである HP や Dell よりも急成長しています。Apple は、プレミアム製品の提供により大幅な伸びを示し、前年比 20% 以上の増となりました。

Global PCs Q1 2025

出典:

Canalys – Global PCs Q1 2025(2025 年第 1 四半期 世界の PC)

IDC – Global PCs Q1 2025(2025 年第 1 四半期 世界の PC)

Gartner – Global PCs Q1 2025(2025 年第 1 四半期 世界の PC)

貿易不安でスマートフォンの出荷が前倒しに

第 1 四半期は、関税に対する懸念がすでに広がっていたため、スマートフォンサプライチェーンでは影響に備える動きがありました(本シリーズの前回の記事は、トランプ大統領が台湾の半導体に関税を適用する考えを述べた直後に公開されたものです)。

IDC のアナリストは、「ベンダーは戦略的に生産スケジュールを加速させ、重要な米国市場などへの大型出荷を 2025 年第 1 四半期に前倒しした」とコメントしています。

4 月になると、Wall Street Journal が米国の iPhone のコストが最大 60% 増になると予測し、影響の全容が見えてきました。しかし、その直後、スマートフォン、PC、チップが免除対象になるなど、一定の猶予が発表されました。次の四半期データでは、関税方針が二転三転したことによる混乱が反映される可能性が高いと思われます。

しかし、こうした事態によって生じる企業や家計の経済不安は、通年の成長期待を低下させることになります。Counterpoint は、2025 年のスマートフォン出荷予測を「微増」から「微減」に修正しました。

こうした市場変化にもかかわらず、混合 OEM においては前年から極めて安定した状態が続いています。

Global Smartphones Q1 2025

出典:

Canalys - Global Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 世界のスマートフォン)

IDC - Global Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 世界のスマートフォン)

Counterpoint - Global Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 世界のスマートフォン)

Xiaomi が急上昇、中国で再びトップに

中国政府は個人用デバイスの下取りに補助金を出して消費拡大を試みました。そのため、スマートフォンベンダーにとって、中国は市場全体に比べ好況となりました。中国の消費者心理は第 1 四半期中に改善しましたが、米中貿易の停滞がどの程度国民感情に水を差すことになるかは、今のところまだわかりません。

Huawei は国内市場で非常に勢いよく実績を上げ続けていましたが、一方で Xiaomi が 10 年ぶりにトップに返り咲き、大きな話題となりました。北京に拠点を置く同社のデバイスが注目を集めているのは、このブランドが提供する電気自動車製品が好評で、これに伴うハロー効果によるものです。中国での Apple の売上は前年比 8% ~ 9% 減でしたが、トップ 5 に入っている外国企業は Apple だけです。

China Smartphones Q1 2025

出典:

Canalys - China Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 中国のスマートフォン)

IDC - China Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 中国のスマートフォン)

Vivo、インドでリードを広げる

インドではスマートフォンの出荷が低調で、在庫過剰が問題となっています。Canalys のレポートによると、前年比 8% 減となっています。ハイエンド分野においては、iPhone 16 を中心に好調でした。出荷の約 90% は 5G デバイスが占めています(前年は 70% 未満)。

Vivo はインドの全出荷台数の 20% 以上を占め、2 位の Samsung との間に差をつけています。Xiaomi は、3 四半期連続で大幅な低調となりました。

India Smartphones Q1 2025

出典:

Canalys - India Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 インドのスマートフォン)

IDC: India Smartphones Q1 2025(2025 年第 1 四半期 インドのスマートフォン)

中南米の訴訟多発地域での大きな成長

中南米では、2024 年にスマートフォンの出荷台数が過去最大となり、1 億 3,700 万台を記録しました。Canalys のアナリストは、現状について次のように述べています。「古くからの大手ベンダーである Samsung と Motorola は、失われた地盤を取り戻すため、Xiaomi や TRANSSION などの中国系メーカーと争いました。一方の中国系メーカーは、定評のあるブランドから収益を得て、地域での存在感を強め続けていました」

最近の SEP 紛争において重要な役割を担っているのが、中南米の 2 大市場であるブラジルとコロンビアです。2024 年の Motorola の記録的な成果に関する Counterpoint のレポートは、Lenovo が所有するブランドにとって両国がいかに重要であるかを物語っています。

Motorola

出典:

Canalys - Latin America Smartphones 2024(2024 年 中南米のスマートフォン)

Counterpoint: Motorola’s 2024 Smartphone Shipments Hit Record High(2024 年には Motorola のスマートフォンが過去最高を記録)

中国の携帯電話ブランド、EMEA での重要な役割を維持

欧州の大手スマートフォンブランドとして、Xiaomi は Samsung と Apple に次いで 3 番目の位置にいます。Canalys のグラフは興味深いものとなっており、Xiaomi、Motorola、Oppo などのさまざまな中国ブランドが並んでいますが、それぞれが強みを見せている欧州市場は異なることがわかります。

Europe Smartphones 2024

アフリカでは、2024 年の出荷台数が 9% 増となり、堅調な伸びが見られましたが、インフレや通貨の弱さが消費者を圧迫するため、2025 年には成長が減速するとアナリストの間では予想されています。Transsion の市場シェアは約 50% に達し、アフリカにおいて堅調な存在感を保ち続けています。

Africa Smartphones 2024

出典:

Canalys - Europe Smartphones 2024(2024 年 欧州のスマートフォン)

Canalys - Middle East Smartphones 2024(2024 年 中東のスマートフォン)

Canalys - Africa Smartphones 2024(2024 年 アフリカのスマートフォン)

「Sisvel Insights Market Data Digest」は、主要な SEP ライセンス業界の商業的情報をまとめた定期的な特集です。この記事の目的は、特許ライセンス担当の経営幹部を対象に、コネクテッドデバイス市場における商業的および競争的な動きについて理解を促すことにあります。このダイジェストは、第三者による公開情報のみを利用しており、リンクを通じて元のソースから全文をお読みいただけます。豊富なデータが利用可能な業種(スマートフォンなど)は、四半期ごとに扱います。その他のセクターは、新しいデータが公開された時点でお伝えします。

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