コネクティビティのライセンスは明確さが鍵 ― 中国の特許リーダーが指摘

カテゴリ
ライセンスに関する見解
日付
2026年3月13日

深圳に集まった各地のライセンス担当幹部らは、透明性の高い条件、商業的理解、そして高度な技術的専門知識に基づく標準必須特許ソリューションの必要性を訴えました。Jake Schindler がレポートします

コネクティビティを取り巻く環境は刻々と変化しています。今週、深圳で開催された第 4 回 IP Forefront ICT Forum では、Wi-Fi、モノのインターネット(IoT)、携帯電話技術における新たな、そして進化しつつあるライセンスの枠組みについて、技術エコシステム全体から集まった企業各社の間で白熱した議論が交わされました。

議論を通じ明らかになったのは、不確実性そのものが主要な課題の 1 つとして浮上しているという点です。中国におけるテクノロジーの中心地である深圳では、コスト予測が最優先事項です。デバイスメーカーは継続的に、メモリーコストの高騰とマクロ経済の見通しの不透明さに苦慮しています。こうした状況から、受け取り・支払い双方の正確なロイヤリティの見通しを企業幹部に説明するよう、社内のチームにはプレッシャーがかけられています。

そのため、議論の大半で、最新の訴訟戦略ではなく、当事者間の立場の隔たりを埋める仕組みをどのように構築するかに焦点が当てられていたのは、当然のことと言えます。

Wi-Fi 市場では透明性を歓迎

Wi-Fi は、市場から長年、データポイントを増やすことを強く求められていた分野です。

Sisvel China のマネージングディレクターである Yixiong Zou が司会を務めたディスカッションで焦点となったのは、ライセンス環境における最近の大きな変化でした。このパネルには、主要な Wi-Fi 実施者である企業 3 社が参加し、そのうちの 1 社である Panasonic は、シズベルの Wi-Fi マルチモードパテントプールに参加する特許権者でもあります。

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シズベルの Yixiong Zou は、透明性を促進するうえでプールが重要な役割を果たすと指摘する

携帯電話分野と比較した場合、最新世代の規格に焦点を当てた裁判所の裁定が少ないこと、また特許権者に求められる標準必須特許宣言の粒度が低いことという 2 つの違いがあります。このため、Wi-Fi における標準必須特許に関する情報の重要性が高まり、透明性の高いランニングロイヤリティ料率が求められるようになりました。

Zou は、この分野における主要な特許権者がプールプログラムを構築し、パブリックドメインに新しい情報を多数公開していることは幸運だと述べます。ここで言う「新しい情報」とは、規格に関連するセクションと一致する特許番号、ロイヤリティ料率およびライセンス条件、プール条件を受け入れたライセンシー(その多くは主要な市場参加者)のリストなどが含まれます。

参加者の間では、特許プールの登場は前向きな動きであるとの認識で一致しました。ただし、その運営はたやすいことではありません。Lenovo の幹部である John Mulgrew 氏は次のように述べています。「プールマネージャはおそらく、極めて難しい仕事です。たとえうまくやれたとしても、誰しもが多少の不満を抱えます。全員に妥協を強いることが成功する唯一の方法だからです。」

Panasonic IP Management Co のチーフ IP カウンセル、Andrew Yen 氏は、市場におけるプールライセンスの需要が進むことで、将来的に参照点が増え、分野全体の透明性が高まるとの見方を示しました。さらに、全体的な特許件数の観点から、Wi-Fi の特許環境は比較的管理しやすいとも指摘しました。

商業的、技術的な知見が不可欠

もっとも、パネリストの全員が一致したのは、Wi-Fi ライセンスには商業的な背景と技術的なニュアンスの両方に関して高度な理解が必要とされる点です。

Wi-Fi 分野全体を分析したとする調査レポートでも、重要な権利の数には、レポートによって大きなばらつきが見られます。有効なライセンサーは、自らが関連性があると思われる権利を明示し、それが対応する規格の一部を特定できなければなりません。これは、最先端の特許プールにおける標準的な実務です。

ポートフォリオの価値と、その採用によってライセンス対象製品がどう改善されるかを説明するには、同様に技術的な専門知識が必要とされます。その後の 5G 技術に焦点を当てたパネルでも、Qualcomm と Nokia の代表者がこの点について同意しました。

Nokia の IP ポリシーおよびアドボカシー担当バイスプレジデントである Collette Rawnsley 氏は次のように述べています。「技術の質的側面の議論は非常に重要です。レポートやチャートだけに頼り、それが実際に何を意味しているのかという洞察がなければ、商業的な議論に資する要素を見逃してしまうことになります。」「すべての特許が同じ価値を持つというわけではありません」と、Qualcomm の法律顧問兼ライセンス担当副社長、Nancy Yu 氏も同意し、特許の価値にはその権利が基本的なものか付加的なものか、必須のものか任意のものかといった要素も含まれると付け加えました。

Xiaomi Group のライセンスディレクター、Ji Liechao 氏は、同社の多様な製品ラインナップでは Wi-Fi 機能の実装方法が大きく異なっていると指摘しました。氏の部署では、各世代の Wi-Fi 規格の実装に際し想定される潜在的なコストについて、製品チームに指針を示しています。

5G に関する議論は 2 つのトレンドに収束しており、それぞれ複雑さを増していることが確認されました。第一に、標準化活動に参加する企業が増え、ライセンス供与の経験が少ない新たな特許権者が参入してきていること。第二に、コネクティビティがさまざまな産業分野に普及する中、ライセンスを必要としながらもその分野に関する知識がない企業が増えてきていることです。

この状況は、セルラー分野に限定されず、ライセンス関係のどちらの側も経験に乏しいというケースを生み出しかねません。これは、特許プールモデルの効率化を進める明確なチャンスです。IoT に関するパネルでは、この点についてさらに掘り下げ、特に中小企業がこの状況にどう対応するかを検討しました。

IoT の状況に対応するため中小企業はサポートを必要としている

華東政法大学の Wang Yanfang 教授は、IoT に関する午後のディスカッションにおいて、印象的なエピソードを紹介しました。ちょうどその朝、弁護士の知人から教授に電話があり、ある中小企業の顧客が標準必須特許関連の課題に直面していると聞かされたといいます。その弁護士は「この問題は無視していいと依頼人に助言した」と話しました。「とても驚きました」と Wang 教授は語ります。「リスクを軽視することなどできません。」

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標準必須特許保有者が最近 IoT 分野の中小企業に対して表明した、調停へのコミットメントをパネリストは歓迎

議論を通じて明らかになったのは、標準必須特許の問題に初めて直面する中小企業が利用できる、さまざまな支援リソースが存在するという点です。しかし最大の課題は、それらの企業(およびその外部アドバイザー)がこうしたリソースの存在を認識しているかどうかにあります。

Oppo の IP 担当ディレクター兼 IP 戦略責任者の Fannie Yu 氏は、標準必須特許保有者が IoT 分野の中小企業に対して行う WIPO 調停誓約を重要な一歩として挙げました。この調停誓約は、昨年 11 月、Ericsson、Huawei、Nokia、Qualcomm、シズベルによって(現在は ZTE も参加)開始されました。このような取り組みは、突然の訴訟リスクを恐れることなく、中小企業が対話し、学ぶ余地を作り出すことができます。ただし、やはりその制度自体が知られていなければ意味がありません。北京において自身も調停人を務める China Mobile の Rui Gao 氏は、中国を拠点とする ADR 機関の間では、標準必須特許に特化した取り組みは出現していないと指摘しています。そのような取り組みが 1 つでもあれば、現地の IoT 企業の間で一般的な認知が向上するのかもしれません。

とはいえ、最も重要なのは教育です。技術と顧客のユースケースの両方について知識がある立場から、交渉を円滑に進めるうえでモジュールメーカーが果たす役割について、議論が交わされました。Wang 教授は、裁判所、ADR 機関、政府にも、物事を明確にできる役割があるかもしれないと述べました。その一方で、教授は業界の参加者に主導的な役割を務めるよう呼びかけ、標準必須特許にかかわる当事者同士に、歩み寄り、お互いの立場を理解することの重要性を強調しました。

イベントの登壇者と参加者は、こうしたすべてのことが IoT 市場にとって持続的なプロセスの始まりに過ぎないという認識で一致していたように思われます。「長期的な視点で取り組む必要があります」と Wang 教授は締めくくりました。

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