東京地方裁判所が標準必須特許関連の新しい訴訟ガイドラインを公開

カテゴリ
ライセンスに関する見解
日付
2026年1月23日

清水克則の報告によると、東京地方裁判所は、これまでの手続きとは一線を画し、スピード、構造、和解に重点を置いた紛争処理の枠組みを発表しました。

2026 年 1 月 20 日、東京地方裁判所知的財産権部は、新しい「標準必須特許(SEP)に基づく特許権侵害訴訟の審理要領」を公表しました。

(標準必須特許(SEP)に基づく特許権侵害訴訟の審理要領 | 東京地方裁判所/東京簡裁以外の都内簡易裁判所)。これは、日本の標準必須特許紛争の扱いにおける注目すべき手続き上の進展を示すものです。

本ガイドラインは、SEP 訴訟における予見可能性を改善し、日本をグローバルな SEP 紛争解決の場として、より実践的で利用しやすいフォーラムとすることを目的としていると、広く理解されています。

主な運用上の特徴

本ガイドラインには、主に 4 つの特徴があります。

  • 初回期日から和解を奨励:裁判所は当初から積極的に和解を模索し、SEP 訴訟でしばしばみられる初期段階での対立による審理の長期化を回避します。

  • 侵害と無効に関する主張立証を各 2 回に制限:裁判所は厳格なスケジュールを設定し、侵害と無効に関する争点について、当事者のやりとりを通常 2 回ずつに制限します。これにより、遅延戦術を抑制し、効率的な審理を推進します。

  • 「実施料後決め」方式の和解条項案の策定:第 1 回期日の直後から、当事者はライセンス契約案のうち料率以外のすべての条件について交渉し、最終決定することが期待されます。和解が成立した場合、グローバル FRAND ロイヤリティ料率は、残された最後の争点として後に追加され、和解記録に付加されます。これにより、料率に争いがある場合も交渉を進めることができます。

  • 被告側による実質的な反証と証拠提供の義務化:本ガイドラインでは、明確かつ具体的な算定根拠を含むグローバル FRAND ロイヤリティの提示を行う原告の義務に加え、被告には以下の明確な義務を課しています。

    • 原告のロイヤリティ計算に対する具体的な認否および反論の提示

    • 被告自身が考えるグローバル FRAND 料率算出の根拠の提示

    • 対象製品の販売数量や売上高などの証拠提出

この要件は、SEP 紛争における情報の非対称性を解消することを目的としています。こうした紛争においては通常、実施者が販売量や売上に関する重要なデータを保有しているためです。これにより、これまで初期段階での情報開示に消極的であった実施者に対し、早期に自らの立場を立証するよう促すことになります。

政府の指針との関係

東京地方裁判所のガイドラインは、日本政府のさまざまな機関が発行する以下の訴訟前段階の指針を補完するものです。

  • 経済産業省 – 「標準必須特許のライセンス交渉に関する誠実交渉指針」:経済産業省のガイドラインは、標準必須特許権者と実施者の双方に対して、誠実な交渉行動に関する拘束力のない規範を定めています。これらは透明性と予見可能性を高めることを目的としていますが、司法の結論を事前に決定するものではありません。http://good-faith-negotiation-guidelines-for-SEPlicenses-en.pdf

  • 特許庁 – 「標準必須特許のライセンス交渉に関する手引き」:国内外の判例、行政判断、ライセンス実務に基づき、問題点や実務が客観的に要約されています。https://www.jpo.go.jp/e/system/laws/rule/guideline/patent/document/rev-seps-tebiki/guide-seps-en.pdf

これらの指針はいずれも、交渉態様がどうあるべきかを概説しているのに対し、今回の東京地方裁判所の新しいガイドラインでは、その評価を裁判所がどのように行うかを説明しています。

強制的な情報開示や短縮されたスケジュール、「実施料後決め」構造といった新ガイドラインの要素は、遅延戦術を抑制し、実施者に早い段階で自分たちの立場を立証するよう強制することになるため、特許権者にとって有利に働く可能性があります。このような交渉態様の重視は、単なる理論上にとどまりません。画期的なPantech 対 Google(Pixel7)訴訟で、東京地方裁判所は、裁判所主導での和解協議において被告が重要な販売データの開示を拒否した非協力的な態度を、交渉の意思を評価する際の重要な要素として考慮しました。

可能性を秘めたゲームチェンジャーではあるものの...

この新たな枠組みは、日本の標準必須特許の状況を一変させるゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。しかし、その真の影響力は、ガイドラインの文面そのものではなく、裁判所が実際の訴訟でいかに一貫性をもってかつ断固とした姿勢でこのガイドラインを適用するかにかかっています。

ここで重要な検討事項となるのが訴訟件数です。このガイドラインが明確に定義されかつ影響力のある手続きモデルに発展するためには、相当な数の判例の積み上げが必要かもしれません。しかし、そうした件数の増加が見られるかどうかは、司法による実効的な枠組みの運用を通じて、利害関係者がどれほど確信を得られるかにかかっています。

ここに、「鶏が先か卵が先か」というジレンマが生じます。

  • 強力な運用が行われた場合、標準必須特許関連の訴訟の増加を後押しするでしょう。

  • しかし一方で、この枠組みが成熟し、実務家が求める予見可能性を実現するためには、訴訟件数の大幅な増加が必要かもしれません。

この相互作用がどのように進化するかによって、最終的に日本が世界の標準必須特許紛争解決において中心的かつ信頼に足るフォーラムとしての役割を確固たるものにできるかどうかが決まります。

清水克則は、シズベルジャパン株式会社の代表取締役です

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