東京地方裁判所、日本初の SEP 差し止め命令を許可
Pantech 対 Google の判決が大きな話題に。実は、確立された法律学に沿ったも のだった
文責:清水克則
6 月 23 日、東京地裁は、Pantech が Google を相手に提訴した特許侵害訴訟に対して、Pixel 7 の販売差し止め命令を下しました。この判決は日本で初めて標準必須特許(SEP)に基づいて差し止め命令が認められた訴訟と言われています。
日本では、知的財産高等裁判所による 2014 年の Apple 対 Samsung 訴訟の大合議判決において、FRAND 条項に基づいてライセンスを取得する意思のある者に対して、差し止めを請求する権利の行使を認めることは不適切であると判断されました。それ以来、10 年以上にわたり差し止め命令が実際に下されることはありませんでした。
その結果、日本の SEP 訴訟では差し止め命令が認められないという認識になっていったのかもしれません。しかし、Apple 対 Samsung 訴訟で、FRAND 条項に基づきライセンス取得の意思がない当事者に対しては差し止め命令が下される可能性があることが改めて示されました。したがって、東京地裁の判決は、確立された法的枠組みから逸脱したものではないのです。
Pantech 対 Google 訴訟に対する裁判所の判決全文はまだ公表されていませんが、報道によると、Google は東京地裁による判決の前に和解協議を行うことに同意したものの、侵害となる販売数や総売上など、ライセンス条件の計算に必要な情報を開示せず、和解案も提示していませんでした。Google が「自ら交渉の可能性を排除した」と裁判所が結論付けたとされています。
Apple 対 Samsung の判決では「FRAND 条項に基づきライセンス供与に消極的である」とするには慎重な判断が求められると強調されましたが、厳密な解釈の 下でも、今回の訴訟での Google の行為はライセンス取得の意思がない実施者の行為と見なすのが合理的であると判断されました。
メディアの報道によると、Google の行為は裁判所に対して挑発的に見えた可能性があります。なぜそのような行為に出たのかは明らかにされていませんが、問題となっている Pixel 7 はすでに日本での販売が終了していたことが主な要因である可能性があります。差し止め命令が事業に影響を与えないとしたら、Google は「消極的とみなされるしきい値」を調べていたのではないかという見方も出てくるでしょう。
前述のように、今回の訴訟は、2014 年に Apple 対 Samsung の判決で確立された法的根拠を覆すものではありません。しかし、実際に差し止め命令が認められたという事実は、日本で SEP 訴訟が増加するきっかけとなる可能性があります。しかし、この判決は上訴の対象となることに注意することが重要です。Google には、上訴するかどうか決定するまで 1 ヵ 月あまりの猶予があります。
今回の判決とは無関係ですが、日本で訴訟が増える他の要因として、「円安」が挙げられます。2014 年 6 月の米ドル/円の為替レートは 102 円前後でしたが、現在は 145 円前後となっています。これは約 40% の下落です。そのため、日本はコストの観点から外国の特許権者にとってより魅力的な場所となる可能性があります。
清水克則は、シズベルジャパン株式会社の代表取締役です


