今後の特許ライセンス市場

カテゴリ
ライセンスに関する見解
日付
2026年1月14日

シズベルのチームメンバーが振り返る、2025 年の主なマイルストーンと、特許市場の未来展望

2026 年がすでに力強いスタートを切った今、シズベル社内の主だったメンバーに、昨年の最重要テーマを振り返るとともに、今後 12 ヵ月間の標準必須特許を取り巻く展望を予測してもらいました。

2025 年の FRAND をめぐる状況は、新たな複雑さと同時に協調の機会をもたらしました。このような背景から、回答者の多くは建設的な関与、友好的な取引、そしてプールが促進するライセンスソリューションを実現するための重要な機会が創出されたとの認識で一致しています。

Donald Chan、FRAND & ロイヤリティ責任者兼 5G MM プログラムマネージャー

昨年の今頃、私は 2025 年には中国の裁判所が FRAND 判決においてより積極的な役割を果たすことになると期待していました。しかし、実際にはそうはなりませんでした。その理由としては、中国における法的手続きの長期化や、中国での訴訟がすべて公開されるわけではないことなど、いくつかの要因が考えられます。

しかし、私の考えでは、もっと本質的な理由があります。それは、中国の業界関係者の間で、標準必須特許のロイヤリティを支払う必要性がより広く認められつつあるということです。中国における今年最大のライセンス動向のいくつかは、紛争というよりもむしろ合意による取引でした。BYD は Avanci のライセンスに合意し、Sunmi は、昆明市中級人民法院に料率決定の訴訟を起こしていたにもかかわらず、Nokia から POS 機器向けのライセンスを取得しました。また、中国の大手ストリーミング配信会社各社が、ライセンサー/ライセンシーとして Access Advance のプールに参加しました。

このような受け入れ拡大の背景には、自社のポートフォリオをライセンス供与したいという企業側の関心の高まりがあると考えられます。2025 年に起こったいくつかの出来事、例えば Samsung に対する ZTE のキャンペーンや、複数の分野にわたる Oppo のライセンス活動などは、こうした傾向があることを示しています。

このような展開が続けば、2026 年にも、クロスライセンス契約が増え、訴訟が減り、紛争が発生しても調停や仲裁が優先されるといった、よりバランスの取れたエコシステムが形成される可能性があります。

David Muus、プログラム統括責任者

当社のプログラムは、2025 年に多くの成果をもたらしました。新たな企業が参入し、新たな市場分野が開拓され、既存の取引が更新され、紛争が解決または未然防止され、そしてロイヤリティが発明者に還元されました。これらの成果は偶然ではなく、不断の努力、粘り強さ、そして互いの協力が生んだ結果です。とりわけ注目すべきいくつかの出来事を以下に示します。

  • 今年の Wi-Fi 6 は絶好調でした。ライセンシーの数が 38 社まで達し、Netgear、Cisco、HP といった大企業がプールに参加しました。これは、業界が当社の条件のもと足並みをそろえつつあることを示すものです。さらに、Panasonic Automotive Systems を迎え、自動車のサプライチェーン分野にも進出しました。

  • また、当社は Wilus と緊密に協力し、パートナーシップの精神に基づき、Lenovo および LG Electronics と Wi-Fi 6 に関する二社間契約を締結しました。

  • AV1 プールでは、市場にある AV1 完成品の約半数にライセンスが供与されるという、大きなマイルストーンを達成しました。同時に、特許状況の混乱を解消し、高い透明性を成し遂げました。

  • また、DVB-T2 プログラムでは、きわめて画期的な成果が実現しました。すべての主要な実施者が、同技術にかかわるすべての特許権者を網羅する単一のプールライセンスに参加したのです。これは、「耳を傾け、関与し、実行する」という長年の努力が実を結んだ結果です。

  • セルラー IoT 分野でも勢いが増しています。Nordic Semiconductor との契約に加え、初のライセンシー群を迎えたうえ、モジュールメーカーとの新規契約も 2 件獲得しました。当社の革新的なモデルは、確かな手ごたえをもって受け入れられています。また、NEC、パナソニック、京セラも、すでに優れた実績を持つ特許権者のグループに加わりました。現在、当社のプールには 37 社の特許権者が参加しており、セルラー標準必須特許スタックの 60% 近くをカバーしています。

これらの成果は単なる数字ではありません。当社が築き上げてきた信頼と提供してきた価値の証なのです。この場を借りて感謝申し上げます。この 1 年を通じて示してくださったエネルギー、アイデア、そして献身にお礼を申し上げます。この感謝は、パートナー、ライセンシー、そして同僚の皆さんへ―いずれも、この成功を支える欠かせない存在です。

2026 年には新たな挑戦が待ち受けていますが、昨年の歩みが示す通り、当社はその挑戦に真っ向から取り組む準備ができていると言えます。水晶玉を覗いてみれば、大晦日の直後に花火が上がるのが見えることでしょう。期待してください。2026 年は刺激的なチャンスに満ちた年になるでしょう。

Jukka Nihtila、最高事業開発責任者

私の見解では、2025 年の最重要テーマは Wi-Fi ライセンスの本格化でした。実際に行われている一連のライセンス活動から、イノベーターと技術実装企業の双方にとって合理的な Wi-Fi 6 のロイヤリティ料率水準へと、市場が安定しつつあることがわかります。主要な市場分野(アクセスポイント、スマートフォン、ノートパソコン)における Wi-Fi 7 の急速な普及を考えると、Wi-Fi 7 のライセンス供与は 2026 年に開始されると予想されます。また、過去 12 ヵ月を見ると、5G や Wi-Fi などの標準化された技術を中心に、特許取引市場が非常に活発で、競争が激しくなっています。

今後 1 年間は、グローバルライセンスでより大きな役割を果たす可能性のある技術の動向と発展に、関心をもって注視していきたいと考えています。Wi-Fi 8 の特許ポートフォリオの開発は 2026 年にピークを迎え、規格の主要なイノベーションの多くが明らかになると予想されます。実際、今年の CES ではすでに Wi-Fi 8 の発表が行われています。セルラーの分野では、スマートフォンや IoT 機器で地上以外のネットワーク接続が展開されるにつれて、3GPP プロトコルが軌道に乗ることでしょう。この技術の初期のユースケースは、低帯域幅の緊急メッセージと IoT 接続となると考えられます。

Matteo Sabattini、知的財産ポリシー統括責任者

英国とドイツの裁判所の間での緊張の高まりは、2025 年における最も劇的なテーマの 1 つでした。多くの利害がかかっていなければ、ある意味興味深い出来事だったでしょう。私個人としては、反、反反、反反反の命令が何度も繰り返されるのは、きわめて不必要なことだと思います。私の一貫した考えは、裁判所や裁判官は法律を執行すべきだというものです。両当事者からの要請がなければ、なぜ料率決定(または暫定ライセンス)が必要なのでしょうか。裁判所は、単に提示された料率が FRAND かどうかを判断すべきではないでしょうか。それは(契約法のアプローチをとる法域の場合)FRAND 契約の違反にあたるのでしょうか、それとも(独占禁止法のアプローチをとる法域の場合)非 FRAND である可能性があり、したがって支配の乱用の可能性を示すのでしょうか。Huawei 対 ZTE では、救済措置が示されます。

このような司法管轄権をめぐる綱引きが水面下で続く一方、2026 年はプールの年になると確信しています。欧州委員会から世界銀行、メディアに至るまで、誰もがプールについて話しています。実際にプールを効果的に成功させる方法を認識している企業はほとんどありませんが、シズベルはその数少ない企業のひとつです。ハイテクのような活気のある分野では、規制の整備は必然的に何年も遅れてしまいますが、産業界と市場は、解決策を見出すために迅速に協力し合い、競争促進的で透明性の高いパテントプールの形をとることが増えていくでしょう。来年にかけては、FRAND で保証された標準必須特許以外にも、さまざまな分野で集約形態が模索されることになると思われます。また、プールだけでなく、今年見られたような複雑な司法管轄権をめぐる争いを回避するグローバルな解決策を中心に、業界がまとまることになると考えています。その結果として、裁判外紛争解決手続き(ADR)の仕組みが広まっていくと考えています。

Joff Wild、最高コミュニケーション責任者

2025 年、パテントプールは欧州連合、米国、中国から”お墨付き”を得ました。

欧州委員会は、技術移転一括適用免除に関する規則と技術移転ガイドラインの改訂案において、パテントプールの重要性を改めて認識し、シズベルを含む複数のプール管理者がすでに実施している業界最高水準の慣行と手続きを支持しました。

一方、9 月にジュネーブで開催された WIPO 主催のイベントで講演した、USPTO の特許政策の首席顧問およびディレクター代理である Chris Hannon 氏は、「標準必須特許分野でのパテントプールの設立と利用」を奨励することの重要性について次のように述べました。「適切に管理されたプールは、ロイヤリティ料率、必須性の問題、特許の範囲に関して透明性を高めます。」

また中国では、中国国家知識産権局がこの春、一部の政府機関と連携し、「パテントプールの設立と運営に関するガイドライン」を発表し、パテントプールが最先端技術の普及に欠かせない重要な手段であることを示しました。

これらはいずれも重要かつ歓迎すべき後押しです。今後 1 年、こうした支持を積み重ねていきたいと考えています。技術市場がますます複雑化し、参入を目指す企業が増えている現在、適切に運営され、透明性の高いプールを利用すれば、世界レベルの発明を支える特許にワンストップで簡単にアクセスすることができます。優れた企業はまた、新しい状況に柔軟に対応でき、ライセンサーとライセンシーの双方にメリットのあるロイヤリティ価格のバランスを見つけることに重点を置いています。こうした企業は、数十年にわたり、法的・規制上の検証にも耐えてきました。つまりパテントプールは、コスト効率の高い確実性と自由な実施を実現できる存在なのです。

2026 年には、ライセンス交渉グループのようなまだ検証されていない新しい概念を優先するのではなく、政策立案者が市場のあらゆる関係者によるパテントプールへの関与を促進することに注力するよう期待しています。そのほうが、どの代替案よりもはるかに迅速に成果を上げることができるでしょう。

Yixiong Zou、シズベル中国マネージング・ディレクター

2025 年は、中国におけるシズベルの画期的な新しいフェーズの幕開けとなりました。私が 9 月に入社し、ここ深圳に常設の事業拠点を設立する計画を発表して以来、私たちはパートナーとのつながり、市場との関わり、オフィスとチームの準備に懸命に取り組んできました。

中国では、幅広い標準必須特許の分野で重要な動きがありました。その一つが、中国国家知識産権局(CNIPA)、科学技術部(MOST)、産業情報技術部(MIIT)、国有資産監督管理委員会(SASAC)、‍国家市場監督管理総局(SAMR)、中国科学院が共同で 4 月に発表した「パテントプールの設立と運営に関するガイドライン」です。このガイドラインは、国内トップの知的財産および技術規制当局が、集約されたライセンスのあるべき姿について、基本原則のレベルで完全に足並みをそろえていることを示すものです。メッセージは極めて明白です。パテントプールは中国が推進する「新質生産力」にとって不可欠であり、また、その推進に十分に合致しているということです。

2026 年以降を見据えると、パテントプールに関するこのガイダンスは、市場志向でバランスの取れた、オープンかつ非差別的なライセンスプログラムを産業界主導で開発する機会を生み出すものと考えています。中国が知的財産の純輸出国への移行を続けている今、中国企業はこうした取り組みの開始や推進において、これまで以上に大きな役割を果たすことになるでしょう。また、中国企業が最先端またはそれに近い幅広い技術を有していることを踏まえると、無線接続やマルチメディア以外の従来とは異なる分野でもパテントプールの開発が始まると考えられます。

編集後記:欧州と米国の標準必須特許法環境に関する詳細なプレビュー記事をお届けしますのでご期待ください。

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