パテントプールは、標準必須特許(SEP)ライセンスの透明性を高めるうえで極めて重要 

カテゴリ
ライセンスに関する見解
日付
2024年5月02日
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接続性が新たな業種に広がる中、ある学術研究が、複雑さを増す市場環境において新規参入者を支援するパテントプールの役割に注目している 

文責:Jacob Schindler 

特許ライセンスの分野では、多くの交渉や契約が秘密保持契約の下で締結されます。これにより、市場に新規参入する企業(特に IoT 分野の製品メーカー)が、ライセンスの仕組みに不慣れであることから困難に直面するのではないかという懸念が生じています。その結果、SEP ライセンスの透明性は、近年の主要な政策課題となっています。特に、欧州委員会が提案する SEP 規制の中心的な目的としても掲げられています。  

このような背景のもと、フィンランドの大学に所属する 4 人の研究者が 論文を発表しました。1 この論文では、SEP ライセンスプログラムがどれだけの情報を公開しているかを検討しています。著者によれば、これは、複数の SEP 保有者およびライセンス管理者がどのような情報公開の選択をしているかを分析した初の研究です。 

パテントプールは業界随一の透明性を提供 

もちろん、各ライセンスプログラムが公開する情報の量や種類には大きな差があります。一般的に、SEP ライセンスは非 SEP ライセンスよりもはるかに透明性が高く、またパテントプールは二社間のライセンスプログラムよりも多くの情報を公開していると、著者は述べています。  

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出典: Gülfem Özmen、Jussi Heikkilä、Matti Karvonen、Ville Ojanen 共著『Digital Marketing of Standard Essential Patent Licensing Programs(標準必須特許ライセンスプログラムのデジタルマーケティング)』 

これらのカテゴリの中でも、大きなばらつきがあります。著者は、主要なパテントプール運営者(シズベルを含む)が運営するプログラムおよび著名な二社間ライセンサー 5 社のプログラムを挙げ、それぞれがロイヤリティ体系、特許リスト、契約テンプレートといった情報をどの程度公開しているかを比較しています。パテントプールは、申告された SEP、請求されるロイヤリティ料率、標準ライセンス条件に関する情報の主要な公開情報源であることは明らかです。  

これらの情報は、研究者、政策立案者、新たな事業者など、市場についての理解を深めたいと考えるすべての人にとって貴重なリソースです。プールライセンスの条件は、多くの場合、技術の普及を促進しながら、さらなるイノベーションを可能にするために、特許権者と実施者の間で継続的な協議と妥協を経て形成された合意の産物です。このような条件の変遷を追跡することで、市場参加者の顕在的な選好を可視化し、エビデンスに基づく政策立案を支援することができます。 

パテントプールは新規参入者に公平な競争環境を提供 

著者が強調しているもう一つのポイントは、特許ライセンス市場におけるノウハウの重要性です。これまでの SEP 市場は、同じ特許権者とデバイスメーカーの間で繰り返し取引されることが特徴でした。こうした繰り返しにより、双方のライセンスチームは制度的経験と市場知識を蓄積し、高度な専門性を実現してきました。  

しかし今日では、特許権者とデバイスメーカーの双方に多数の新規参入者が存在します。現在の 5G 時代において、かつてない数の企業が規格策定に参加し、SEP ポートフォリオの構築に取り組んでいます。同時に、より多くの業種に接続性が広がったことで、事業実施の自由を求める主体が急増しています。  

その結果、著者は市場を「内部者」と「外部者」に分類しています。新規参入者は、SEP、ロイヤリティ料率、ライセンス条件に関する公的情報やデータの可用性に大きく左右される学習プロセスを経る必要があります。 

このような状況を踏まえると、IoT 分野で従来型の透明性の高いパテントプールモデルを採用するライセンスプログラムが登場することが有益なのは明白です。この研究の結論は次のとおりです。「ライセンススキーム情報がオンラインで公開されていることは、取引コストと検索コストを削減し、ライセンスの効率性を高めると思われる。」  

解決策の 1 つ 

この研究は、パテントプールライセンスモデルの透明性の利点を強調する欧州発の最新研究の 1 つにすぎません。2024 年 3 月、Sisvel Insights は ミュンヘン工科大学の Yanis Luca Gamarra 氏の論文を取り上げました。この論文では次のように述べられています。「包括的な情報の開示は、公平かつ効率的なプール運営に不可欠であり、利害関係者の信頼とコンプライアンスを促進する。」 

また、シズベルの社長 Mattia Fogliacco と政策顧問 Vincent Angwenyi は、2 月の 記事で、シズベルのセルラー IoT パテントプールは、欧州委員会が表明した透明性と効率性に対する懸念に対応するために特別に設計されたと述べています。また、両氏は、「パテントプールは、二社間ライセンスによくある知識の非対称性を大幅に軽減します。多くのプールは、商業的に機微な情報を守りつつ、情報やライセンス条件をつまびらかに公開しています」と記しています。 

EU の規制当局は、標準必須特許(SEP)の世界を監視しています。学術界を含むさまざまな関係者が特許ライセンスの実態を検証し、特に IoT に焦点を当てたプール型ソリューションが 注目を集めていく中で、 「パテントプールが、新たなライセンシーとライセンサーを市場に公正かつ効率的に取り込む、実績ある市場主導の手段である」との結論は避けられないでしょう。 

 

Jacob Schindler は、シズベルの香港オフィスに拠点を置く、コンテンツおよび戦略コミュニケーションのシニアマネージャです。 


1 Özmen, Gülfem、Heikkilä, Jussi、Karvonen, Matti、Ojanen, Ville「Digital Marketing of Standard Essential Patent Licensing Programs(標準必須特許ライセンスプログラムのデジタルマーケティング)」SSRN にて閲覧可能: https://ssrn.com/abstract=4766891 または http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4766891。シズベルは当該研究に対していかなる支援も行っていません。

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