スマートフォンや PC の出荷台数が減少し、販売価格が上昇する見込み
コンシューマー製品が「メモリ」不足の影響を受ける一方で、Wi-Fi や IoT のインフラの高度化は加速
メモリチップの不足がコンシューマーテックの分野における大きな話題となっています。半導体メモリメーカーがより収益性の高い AI インフラ向けに生産能力を割り当てるようになるに伴い、スマートフォンや PC のメーカーにとってストレージ部品の調達はますます困難かつ高コストになっています。
供給制約がますます厳しくなることを懸念したデバイスメーカーは、2025 年末に、可能な限りの在庫を確保しました。その結果、第 4 四半期は一部の製品分野で出荷台数がここ数年で最も好調となりました。しかし今後を見据えると、メモリの在庫逼迫に伴い出荷台数が制限される可能性があり、また平均販売価格の上昇につながることも考えられます。プレミアムブランドはこうした状況にも対応できる体制を適宜整えていますが、低価格帯メーカーは苦境に置かれるかもしれません。
インフラ分野では、Wi-Fi 7 やセルラー IoT の導入が加速しているのと同時に、次世代ネットワークの成長が断続的かつ急速に見られました。ではここで、昨年の第 4 四半期の市場調査を少し振り返ってみましょう。
エンタープライズ WLAN:Wi-Fi 7 がシェアを拡大
Wi-Fi インフラに対する投資は堅調に伸び続け、新規投資額の 3 分の 1 近くを Wi-Fi 7 ソリューションが占めました。
IDC によると、2025 年第 3 四半期のエンタープライズ向け WLAN インフラの売上高は前年比 7.8% 増の 27 億ドルとなり、第 2 四半期の 13.2% 増に比べ減速傾向ではあるものの、依然として着実な伸びとなりました。Wi-Fi 7 は、前世代よりも急速に普及しています。従属型ア クセスポイントの売上高は第 1 四半期が 12%、第 2 四半期が 21% だったのに対し、第 3 四半期は 31% を超え大きく拡大しました。残りは、Wi-Fi 6E と Wi-Fi 6 が占めています。
主要な地域の多くでで成長が見られる一方、中国は例外でした。ただし、中国の前年比 1.3% 減という緩やかな減少は、第 2 四半期の 6.6% 減からは大幅に改善していることがわかります。
Cisco は、エンタープライズ向け Wi-Fi 市場でトップの座を維持し、四半期の売上高が約 10 億ドルに達し、第 2 位の HPE との差を大きく広げています。Ubiquiti は急速に伸び続け、前年比 47.1% 増の 3 億ドル(市場シェア 11%)に達しました。一方で Huawei は、33.7% 増の 2 億 3,800 万ドル(市場シェア 9%)まで回復しました。
さらに詳しい情報:IDC:2025 年第 3 四半期のエンタープライズ WLAN 市場は 7.8% 成長
セルラー IoT:インドでスマートメーターや POS 端末が急増
Counterpoint Research によると、世界のセルラー IoT モジュールの出荷台数は 2025 年第 3 四半期に前年比 10% 増となりました。その伸び率は、販売価格の下落が利幅を圧迫する中、第 2 四半期の 17% 増から減速しています。
しかし、明るい兆しも見られました。インドでは、スマートメーターと POS 端末の牽引により、出荷台数が前年比 40% 増となりました。また、これらの関連産業は中国市場の成長も後押しし、中国では前年比 7% 増となりました。
Quectel は、中国市場と海外市場で強固なシェアを誇り、引き続き世界首位を維持しています。これに続くのが China Mobile と SUNSEA です。Lierda は特に大きな伸びを示し、前年比 73% 増となり、注目を集めました。Telit Cinterion は、非中国系企業では首位のサプライヤとなりました。
規格の細分化が進む中、Cat-1 bis が主流ソリューションとして台頭し、第 3 四半期の出荷台数の約半数を占めました。一方、5G RedCap は将来の成長候補と目されていますが、価格やネットワークカバレッジの条件が十分とは言えず、躍進できない状況です。
さらに詳しい情報:Counterpoint Research:2025 年第 3 四半期のグローバルセルラー IoT モジュールの出荷台数は前年比 10% 増
タブレット:パンデミック特需以来最高の年
Omdia によると、タブレット市場では第 4 四半期の出荷台数が前年比 9.8% 増となり、2025 年通年の出荷台数が 1 億 6,200 万台に達しました。これは、パンデミック特需に沸いた 2020 年以来、年間ベースで最高の水準となります。
もっとも、この成長の一部はメモリの供給制約や価格上昇を予測したベンダーが先回りしたことによる在庫の前倒しによって押し上げられた側面があります。Omdia は、部品コスト上昇に伴い、2026 年にはタブレットの需要が一段と圧迫される可能性があると警告しています。
こうした状況下でリードを広ようとしているのが Apple です。同社は、第 4 四半期に 1,960 万台の iPad を出荷し(前年比 16.5% 増)、市場シェアは 44.9% に達しました。一方、Samsung は、新製品の発売にもかかわらず、9.2% 減の 640 万台(市場シェア 14.7%)となりました。Lenovo は目立った成長を見せ、中東およびアジア太平洋市場での積極的な拡大を背景に前年比 36% 増の 390 万台を出荷しました。
さらに詳しい情報:Omdia:2025 年、市場が減速に向かう中、タブレットの世界出荷台数は 10% 増
PC:出荷台数は堅調に伸び、価格は上昇の見込み
2025 年、ノートおよびデスクトップ PC の出荷台数は 2 億 7,000 万台を超え、前年比 9% 増となりました。2021 年のピークを最後に市場では出荷台数が減少していましたが、今回の増加は大きな転換点となりました。
Microsoft による Windows 10 マシンのサポート打ち切りを受け、企業での買い替えが第 4 四半期の成長を促すかたちになりました。また、さらなる価格上昇の予測も、ハードウェアのアップグレードを企業に促す結果になりました。
Omdia によると、DRAM の価格は 2025 年の間に最大 70% 増という急上昇を見せており、2026 年の第 1 四半期だけでも、さらに 50% 上昇すると予測されています。SSD の価格は同期間に 40% 上昇しました。BOM のコストが拡大する中、アナリストはこれらの増加分の多くが消費者に転嫁されると予想しています。
第 4 四半期の出荷台数の 75% は上位 5 社(Lenovo、HP、Dell、Apple、ASUS)が占め、いずれも前四半期比増となりました。中でも Lenovo は、四半期と通年のいずれにおいても首位となり、HP および Dell を引き離しました。Dell と ASUS はそれぞれ、第 4 四半期に顕著な伸びを記録しました。
さらに詳しい情報:
Gartner:2025 年第 4 四半期の世界の PC 出荷台数、前年比 9.3% 増、通年では 9.1% 増を記録
Omdia:2025 年の世界の PC 出荷台数は 9% 増。しかし、メモリとストレージの供給問題が 2026 年の見通しに影を落とす
スマートフォン:2026 年は市場縮小へ
Counterpoint Research によると、世界のスマートフォン売上高は、2025 年第 4 四半期に平均販売価格が初めて 400 ドル台を上回ったことで、過去最高を記録しました。2025 年の年間出荷台数は約 12 億 5,000 万台に達し、前年比 2% 増となりました。
一方で、「メモリ」不足により大きな混乱が生じています。最新のサプライチェーン分析では、以下のような見方が示されています。
主流となる 8GB + 256GB メモリ構成を例に挙げると、2026 年第 1 四半期の推定契約価格は前年比で約 200% の上昇、前年同期比で約 3 倍の上昇となっている。従来、「メモリ」はスマートフォン BOM の 10 ~ 15% を占めるにとどまっていたが、現在では 30 ~ 40% まで増加している。
こうした状況を背景に、TrendForce では、2026 年通年のスマートフォン出荷台数は前年比で 10% 減になると予測しています。昨年 12 月には、IDC は 5.2% の出荷減少という最も悲観的なシナリオでの予測をし、一方で Counterpoint は、出荷の減少幅は 2.1% にとどまるとの見通しを示していました。
供給上の制約は、ブランドごとにさまざまな影響を与えます。ハイエンドデバイスのメーカーは、上昇コストを自社で吸収あるいは消費者に転嫁する余地が大きいとみられます。また、出荷台数が極めて多く、サプライヤとの関係が強固な企業は、市場に出回るメモリチップが限られていたとしても、その入手という点では優位に立てるでしょう。
こうした要素が Apple や Samsung にメリットをもたらし、両社は 2025 年にトップの座を確立することになりました。Omdia によると、両社の 2025 年の出荷台数はそれぞれ 7% 増で、これにより市場シェア 19% を占める結果となりました。
一方、両社のライバルである中国系ブランドは苦境に立たされる可能性があります。メモリのコスト上昇が低価格帯の製品に大きな影響を及ぼすためです。最近のメディア報道では、Xiaomi や Transsion などのベンダーが 2026 年の出荷目標を数千万台規模で引き下げたと伝えられています。アナリストは、Huawei など、サプライチェーンと強固なつながりのある企業が、こうした状況下で事業拡大のチャンスをつかむと予測しています。
部品コスト、最終販売価格、出荷台数が不確実であることから、ライセンス交渉は今後さらに複雑になる可能性があります。
さらに詳しい情報:
Counterpoint Research:世界のスマートフォン平均販売価格が四半期ベースで初めて 400 ドル台を突破
2025 年第 4 四半期の世界のスマートフォン市場は 2.3% 成長。Samsung と Apple の好調な業績が牽引 - IDC
「Sisvel Insights Market Data Digest」は、主要な SEP ライセンス業界の商業的情報をまとめた定期的な特集です。この記事の目的は、特許ライセンス担当の経営幹部を対象に、コネクテッドデバイス市場における商業的および競争的な動きについて理解を促すことにあります。こ のダイジェストは、第三者による公開情報のみを利用しており、リンクを通じて元のソースから全文をお読みいただけます。豊富なデータが利用可能な業種(スマートフォンなど)は、四半期ごとに扱います。その他のセクターは、新しいデータが公開された時点でお伝えします。
