セルラー IoT 特許ロイヤリティ:詳細分析
公表されている料率の比較により、シズベルのセルラー IoT の高い価値提案が明らかに
文責:Sven Törringer
モノのインターネット(IoT)は、将来の都市、電力網、農場、サプライチェーンにとって不可欠な存在となり、それを実現するための接続手段は多数存在します。 市場データが示すように、業界では、NB-IoT や LTE-M を含む、ライセンスされた無線周波数帯を用いたソリューションへの傾倒がますます強まっています。
これらの技術は誰でも利用可能ですが、必ずしも無償で使用できるわけではないため、企業はビジネス構築の際に特許ライセンスについても検討する必要があります。幸いにも、ロイヤリティの全体像については大きな明確化が進みつつあります。
30 件以上の特許ポートフォリオを対象とするシズベルのセルラー IoT ライセンスの公表料率と、主要な特許権者や他のパテントプールが開示している料率とを比較することで、機器メーカーはライセンスの全体像を俯瞰的な視点から把握するできます。この比較は、シズベルが提供するライセンスの大きな価値提案を示しています。
注記:本記事でこれ以降に示される情報は、あくまで参考用であり、シズベルが提供するものであって、シズベルのセルラー IoT プログラムに関与する各特許権者の見解を必ずしも反映するものではありません。
シズベルのセルラー IoT ライセンスの料率と特許の対象範囲
まずは、シズベルのセルラー IoT におけるライセンス料率から説明します。NB-IoT 対応機器では 0.08~0.66 米ド ル、LTE-M 対応機器では 0.08~2.00 米ドルの範囲です(詳細な内訳は こちら および以下をご参照ください)。
シズベルのセルラー IoT プログラムに参加する特許権者のリストおよびその保有・管理する特許数は、プログラムへの新規参加者の増加に伴い大幅に増加しています。実際、設立時と比べてパテントプールが対象とする特許数は 2 倍以上に増えており、現在もなお拡大中です。最新の特許権者リストは、以下の URL からご確認いただけます: www.sisvel.com/c-iot
これらの料率によって、当該技術分野の多くの関連特許にアクセスすることができますが、すべての特許にアクセスできるわけではありません。一部の特許権者は、パテントプールへの参加ではなく、自身の特許を独占的かつ個別にライセンスすることを選択する場合や、特許のライセンス活動自体を積極的に行わない場合もあります。
このパテントプールの価値提案を評価するには、シズベルのセルラー IoT ライセンスが全体の特許群のうちどの程度をカバーしているかについて、一定の前提を置く必要があります。特許群における各特許権者の正確な比率を特定することは、非常に困難であると理解されています。欧州の標準化団体である ETSI は、現在のところ、セルラー通信分野における特許宣言情報に関して最も詳細な情報源とされています。ただし、ETSI の情報は完全ではなく、そ のデータベースはすべて自己申告に基づいている点には注意が必要です。情報の正確性や完全性について独立した検証は行われておらず、「過剰宣言」と呼ばれる事例も広く知られています。これらの制約はあるものの、ETSI のデータベースは参考指標としては十分に妥当性のあるものです。
この分析のために、シズベルは独立した調査会社に依頼し、2023 年 6 月までに収集されたデータに基づいて ETSI の特許宣言データベースの分析を実施しました。調査会社 Dolcera によると、シズベルのパテントプールに参加するライセンサーは、NB-IoT に関連するユーザー機器向けの標準必須特許(SEP)の 51%、および LTE-M に関連する同 SEP の 50% を占めていることが判明しました。i
シズベルのセルラー IoT が SEP 分野において強い立場にあることは、標準開発活動の分析により裏付けられています。例えば、統計によれば、NB-IoT および LTE-M の規格における関連する承認済み技術的貢献のうち、シズベルのセルラー IoT メンバーによるものが 50% 以上を占めています。
この点については私たちの言葉を鵜呑みにする必要はありません。他の第三者による推計も数多くあり、中にはシズベルのセルラー IoT のシェアをさらに高く見積もっているものもあります。ただし、本記事での分析には Dolcera の数値を用いています。
では、累積ロイヤリティ料率はどのようなものになるのでしょうか。シズベルのセルラー IoT に参加していないすべての特許権者が、当社と同水準のロイヤリティ料率を、自らの全体特許群におけるシェアに応じて設定したと仮定すると、理論上のフルスタック料率は次のとおりです。
言い換えれば、すべての特許 権者がシズベルのセルラー IoT と同水準のロイヤリティ料率を採用した場合、累積ロイヤリティ料率は、機器の販売価格の平均で 6% 未満となります。
これは、スマートフォンなどのコンシューマーエレクトロニクスに対して、世界各地の裁判所が公正かつ妥当と認めた LTE 規格全体のロイヤリティ範囲(6%~13.3%)の下限、あるいはそれを下回る水準で、シズベルのセルラー IoT が運用されていることを意味します。ii スマートフォンと異なり、技術的な機能がより限定的であるスマートセンサーやスマートメーターにとって、セルラー接続が価値の大部分を占めていることを考えると、これは非常に低い水準です。
次に、これらの数値が市場の他の料率とどのように比較されるのかを見ていきます。
Qualcomm との比較
Qualcomm の IoT ライセンス ウェブサイトによると、Qualcomm は、NB-IoT または LTE-M 機能を有する機器を対象として、モジュール購入価格の 5% をロイヤリティ料率とするライセンスを提供しており、最低料金は設定されていません。この内容を理解するには、これらの機器向けモジュールの平均販売価格(ASP)に関する公開市場レポートを参照する必要があります。これらのレポートに記載された ASP を Qualcomm の公表料率に適用すると、LTE-M 機器で平均 0.485 米ドル、NB-IoT 機器で 0.15~0.30 米ドルのロイヤリティが発生することになります。iii
では、コスト負担の観点で見た場合、これらの料率はシズベルの料率とどう比較できるでしょうか。すべての特許権者が、特許群における自らのシェアに応じて Qualcomm と同水準の料率を設定したと仮定した場合、NB-IoT では 1.50~3.00 ドル、LTE-M では 4.85 米ドルの理論上の全特許の料率となります。いずれも、上述したシズベルの理論上の全特許の料率の上限を上回る水準です。
Huawei との比較
Huawei もまた、自社のセルラー IoT ライセンスプログラムの ライセンス料率を開示 しています。Huawei は、IoT に特化した機器に対して、NB-IoT および LTE-M のいずれも 1 台当たり最大 0.75 米ドルを上限とした純販売価格の 1% を課しています。IoT に対応するその他の機器に対しては、NB-IoT が 1 台当たり 0.30 米ドル、LTE-M が 0.50 米ドルの固定料率です。
重要な点として、Huawei はシズベルのセルラー IoT パテントプールのライセンサーです。このパテントプール契約により、Huawei を含む 30 社以上の特許権者が個別に課していたロイヤリティは、プールによる取引効率の向上により可能となった単一かつ定額の料率に置き換えられています。
フル LTE を対象とした IoT パテントプールとの比較
IoT 接続の手段は低消費電力広域通信網(LPWAN)だけではなく、フル LTE 規格を採用する企業もあります。このような場合、該当製品はシズベルのセルラー IoT ライセンスの対象外となります。
Avanci は IoT 分野において複数のライセンスプログラムを展開しており、これらはシズベルのセルラー IoT が想定する機器よりも一般的に高性能な機器 に対して、LTE 規格全体をライセンス供与しています。
これらのプログラムによるフル LTE の料率および理論上の全特許の料率は、以下の表に示されています。
IoT 機器メーカーがフル LTE 接続を導入するか、LPWAN 技術を導入するかを検討する際には、さまざまな要素を考慮する必要があります。一般的に、LTE 規格の低電力サブセットである NB-IoT および LTE-M は、コストを抑える設計となっています。上述の数値からは、これらの技術に係る特許ライセンスコストも低くなる可能性があることが示唆されます。
シズベルのセルラー IoT はフル LTE 機能を備えた製品を対象外としているため、上記のシズベルおよび Avanci の料率は、当該製品において同一のロイヤリティスタックとして算入すべきではありません。
最適な選択肢
利用可能なすべてのデータを踏まえると、シズベルのセルラー IoT ライセンスは、公正、合理的かつ非差別的な条件で提供されているだけでなく、広く認識されているベンチマークに照らして、対象機器に対するライセンス特許の価値を考慮すると、最適な選択肢でもあります。
また、イノベーションの継続を促進し、エコシステムのすべての関係者に利益をもたらすために、多額の研究開発投資を行った企業に適切な報酬を与えることが重要です。一方、本プログラムにおいてシズベルのセルラー IoT は、合理的な FRAND 範囲の上限にロイヤリティを設定しない方針をあえて選択している点にも留意すべきです。
この方針は、現在および将来のあらゆる製品業界において、NB-IoT および LTE-M 技術の広範な導入と普及を促進することを目的としています。パテントプールに参加す ることで、特許権者はその特許技術に固有の価値の一部を事実上手放す代わりに、円滑なライセンスを通じてセルラー IoT 規格のより広範な受容と実装を促進しているのです。
まとめると、シズベルは、世界トップクラスのイノベータに公正な報酬を提供するとともに、自らが創出に寄与した標準化技術の普及を促すという揺るぎない使命のもと、ライセンシーに対して価値を提供しています。シズベルのセルラー IoT ライセンスプログラムは、これらの目標を的確に実現していると確信しています。
Sven Törringer は、シズベルのセルラー IoT プログラムマネージャです。
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i. 本記事における SEP スタックの保有比率に関するすべての数値は、シズベルが委託し、ETSI のウェブサイトから 2023 年 6 月までに取得したデータに基づいて Dolcera が実施した調査に由来しています。
ii.例えば、Unwired Planet v Huawei [2017] EWHC 711 (Pat)、TCL Communication Technology Holdings, Ltd v Telefonaktienbolaget LM Ericsson et al, No. 8:14-cv-00341(C.D. Cal. 2017)、および Oppo v Nokia(2021 Yu 01 Minchu no 1232、重慶市第一中級人民法院)などを参照してください。
iii.これらの数値を算出するにあたっては、公的に入手可能な市場レポートに記載されたモジュールの平均販売価格(ASP)に、公開されている 5% の料率を適用しました。NB-IoT モジュールの ASP は、中国では US$ 3.00、海外では US$ 6.00 の範囲であると報告されており、LTE-M モジュールの ASP は全世界で US$ 9.70 と報告されています(Techno Systems Research、2024 年 1 月、「2023 Cellular Broadband Device & Module Market」)。





